鉄拳4について



酷評を受けることが多いこのタイトル。

それも、前作までのファンから多くの批判をもらうことが多い。鉄拳4は鉄拳では無い、とすら言われることもある。

思うに、それは今までのシリーズから変わりすぎた面が多いためだと思う。




大きなところでは、無限フィールド。今作はいわば箱庭のような場所での戦いが中心だ。

今までのシリーズと比較して、プレイヤーに狭苦しさを感じさせてしまっている面はある。

また、多くのお手軽な大ダメージ空中コンボも消えてしまい、空中コンボの始動技も弱体化したものが多い。(風神拳等)

「2〜3回浮かせば勝ち」の形式を潰すためなのだろうが、それは同時にある面での爽快感を潰してしまった。

横移動の性能の向上により、相対的に軸ずれが起こりやすく技が外れやすくもなった。

鉄拳シリーズの魅力の一つに、「初心者でも暴れればどうにかなる時もある」というものがあったが、

今作では暴れると手痛い目に会うことの方がずっと多い。今までよりもさらに初心者が入り辛くなってきたように思う。

CPUが超反応するようになったのも、初心者が入り辛くなってしまった理由の一つだ。

今作では、同一の行動を何回か取ると、CPUが同じ潰し方を繰り返すようになる。(タイムアタックでのパターンハメをしているとよく解る)

前作にも全く無かった行動ではないが、以前の作品はいい意味でランダムな行動を取ってくれるときもあったので、妙な人間味すらあった。




多くの欠点があるこのゲームだが、けして駄作呼ばわりされるものではないと思う。

自分が鉄拳を好きだということを除いても。そもそも単体の3D格闘ゲームとしてみればかなりの出来であることは間違いない。




そして、これらの欠点は見方を少し変えればけして欠点ではない。

有限フィールドへの転換は、今までに無い地形を意識した戦略を考えさせてくれる。

個対個の攻防が全てであった前作に別の状況判断要素を加え、広がりを持たせてくれたとも言える。

大ダメージ空中コンボの減少は、地上戦の比重を大きくした。

製作者はきっと片方だけが打撃を加え続ける空中コンボよりも、互いが知恵を絞りあい攻防を繰り返す地上戦を重く扱おうと考えたのだろう。

横移動の性能の向上は、空間を有効利用させるための試みの一つであろう。

完全に成功したかどうかは解らないが、今作のスタイルからすると必要不可欠な変更であったと思う。

CPUの性能向上は、対人戦以外にも長く楽しんでもらうための変更だと思う。

柔軟な発想を持ったCPUを作るのは難しい。同一の行動を取り続けるプレイヤーに超反応で対応させる比率をあげ、

CPUを強くしたのは苦肉の策であったのだろう。




問題として残るのは初心者への配慮だが、これは残念ながら今作では大部分切り捨ててしまっているのだと思う。

意識してでは無いのだろうが。

今作は、あくまで鉄拳シリーズを今まで深く楽しんで来た人たちへのアッパーバージョンなのだと考える。

スーパーマリオに対するスーパーマリオ2のように。

無論家庭用が発売された今、初心者の方でも練習しだいで充分に追いつける。

只、以前のシリーズのように、実力差が大きなものではない場合によくあった事故(この言葉は好きではないが)で勝てるケースは少なくなった。

強い技を1つ2つ覚えればよいという図式が消え、ある程度の熟練が誰にでも必要になったわけだ。

「適当にも楽しめますよ」が「ある程度は練習してくださいね」になっただけだ。




思うに、鉄拳シリーズはいつも「 只、足すこと 」によって進化してきたと思う。

それが今回の4では、「 足したり、引いたりすること 」によって新しいものを作ろうとした。

その事が、結果として古参のファンの批判を受け、新規のファンからも敬遠される結果になってしまった。

それだけの事だと思う。良くも悪くも転換期の実験作的側面があることは確かだ。

しかしながら、ゲーム単体としてみればかなりの良作であり、「鉄拳シリーズ」の正当後継者であることは間違いない。

前作と比べてこうだ、という論旨をよく見かける。前文と矛盾しているようで申し訳ないが、そういう人にはもっと「鉄拳4」単体を見て欲しい。











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