阿寺渓谷の濃飛流紋岩
 大桑村の阿寺渓谷は清流と見事な森林で景観美を誇る。入り口付近は花崗岩が続くが、奥に進 むとやがて、花崗岩に比べるとやや黒っぽく層を成した岩体が現れる。これは濃飛流紋岩と呼ば れ、恵那山付近から岐阜県の北端の白川村地域にいたる広大な地域に分布する巨大な火山噴出堆 積物層である。  濃飛流紋岩の分布する面積は4000平方キロを超え、噴出物の厚さは2000mを超える。この火山 活動は、おそらく知られている限りでは世界最大級のものである。 (写真上左:阿寺渓谷の入り口。巨大な花崗岩塊が累々と重なっている。写真上右:濃飛流紋岩)
 濃飛流紋岩は,中生代の白亜紀後期から新生代初めにかけての時期にあたる約8000万年〜約 6000万年前までの火山活動で噴出した火砕流堆積物を主とした地層で、6回の活動ステージがあ ったことが知られている。  火砕流は火山ガスと火山噴出物が混じりあって高温を保ったまま地表に堆積する。堆積した噴 出物が膨大だと自分の熱で再び溶けて硬い溶結凝灰岩となる。いわゆる濃飛流紋岩と呼ばれる石 は、溶岩が地表で固まってできた火山岩なのではなく、大部分は、こうして”積もって”できた 石である。(写真上左:溶結凝灰岩。黒いレンズ状部分は凝灰岩が積もった後溶けてガラスにな った部分で、レンズの長さは2cm〜15cm程度。 写真上右:流紋岩状の部分。灰色の鉱物は石英、 黒い鉱物は黒雲母。石英の粒径が5mm程度。)
 激しい火山活動中にはたびたび巨大な陥没盆地 (コールドロン) が形成され、この中に大規模 な火砕流が噴出して厚く堆積した。火山活動が一時的に休止すると、湖ができて、ここに湖成層 が堆積した。阿寺川流域には、阿寺層と呼ばれる湖成層が分布している。 (写真上左:阿寺層の露頭。 写真上右:阿寺層は、泥質岩の中に大小さまざまな礫が取り込ま れている。白っぽい石は溶結凝灰岩や花崗岩。黒っぽい石は中古生層起源の堆積岩である。) 濃飛流紋岩と同時期には、中部地方のあちこちで流紋岩の活動が地表で発生しており、一方、 地下では膨大な量の花崗岩が同じ時期に形成されている。白亜紀末期に地表及び地下で発生した すざまじい火成活動の熱源は何だったのだろうか。    <参考文献> 信州地学教育研究会(1980)長野県地学図鑑 信濃毎日新聞社 日本の地質「中部地方U」編集委員会(1988)日本の地質5「中部地方U」 (宮坂 晃)

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