富士見町の糸魚川静岡構造線

 長野県中央部を縦断する現在の活断層としての糸静線は北部・中部・南部に区分されており、 中部が左横ずれ、南部が西傾斜の逆断層として活動している。(これについては松本盆地東縁断 層の項参照)富士見町周辺の糸静線は中部から南部に転移する場所であって、どのように糸静線 の形態や動きが移り変わっていくのか興味が持たれる。
 富士見町はもともと活断層(糸静線)による変動地形が発 達しており、活断層という言葉が世間に定着してきた昭和50 年代から多くの大学が調査研究に入ってきた。活断層をトレ ンチ調査するという手法も日本では最も早い時期に行われた。   (左図)富士見周辺の地形  オレンジ色は第四紀火山である八ヶ岳の裾野地形 灰色は中古生界(秩父帯)の山地 白い部分が低地であるが、このなかに細長い丘が2列 直線的に配列している(緑色)   K:金沢 M:御射山神戸 F:富士見    P:パノラマスキー場 N:入笠山 W:若松    Y:横吹
  [上の図の上にカーソルを持っていく](javascriptをon,または all scriptを許可する)  赤い線が断層 A:青柳断層群  O:大沢断層群   W:若宮断層群 細長い小丘は断層の活動によって絞りあげられるように盛り上がっており、このような地形を プレッシャーリッジ(またはテクトニックバルジ)と呼ぶ。  この図から、糸静線は茅野市の南で分岐していることがわかる。
(左上写真)青柳断層と金沢断層の分岐点を北側から見る。手前の丘の右側を青柳断層が、奥の   丘の右側を大沢断層が走っている。 (右上写真)青柳駅周辺の青柳断層。JR中央線沿いに断層が通過している。手前の道路は国道   20号線
(左上写真)富士見から西側を見る。国道20号線から西に向かう道路はどれもこのように丘を   越えないといけない。手前の国道20号線沿いに青柳断層が走る。 (右上写真)若宮から南方を望む。道路沿いに若宮断層が走っている。奥の丘の付根でトレン   チ調査が行われた。  多くの大学や研究者がトレンチ調査・電探・重力調査など様々な物理的手法で調査した結果、 青柳断層が逆断層(南西側が北東側にのし上げる)である一方、若宮断層は左横ずれ成分が卓 越する断層だということが分かった。おそらく地下深部では一本の断層が地表付近でいくつか の断層に分岐し、それぞれが異なった動きをしているのだという。  <参考文献>    東郷正美,1987,茅野市坂室付近の糸静線活断層系による変位地形,活断層研究4 藤森孝俊・太田陽子,1992,諏訪盆地の活断層詳細図,活断層研究10    信濃毎日新聞編集局,1998,信州の活断層を歩く,信濃毎日新聞社 天竜川上流工事事務所,1984,天竜川上流地域地質解説書,中部建設協会   (宮坂 晃)

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