箱瀬(はこぜ)の滝

 北相木村の箱瀬の滝は、新生代 第三紀 漸新世といわれる北相木層に、秩父中古生層に属する御座山 (おぐらやま)層群が衝上している北相木断層が、観察される地点として有名である。  地層累重の法則によれば、新しい時代の地層ほど古い地層の上位に重なるはずだが、ここでは、新し い地層の上に、断層を介して古い地層が乗り上げている。このように、もともと下位にあるはずの地層 が上にのし上がるような断層を逆断層または衝上断層(thrust:スラスト)という。  滝は上盤側の御座山層群のチャ−トにかかっており、その下の滝壺の部分が下盤側の北相木層の砂岩 泥岩互層になっている。 写真の大部分は御座山層のチャ−ト岩体で、右端のやや色の濃い部分が北相 木層である。滝壺の上を通る道路沿いの崖で、かつては断層面が観察されたが今はコンクリ−トに覆わ れてしまっていて、残念ながら観察できない。

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 箱瀬の滝のすぐ上に露出する層状チャ−ト。  この滝より東側には道沿いにチャ−トの崖 がしばらく続いている。  チャ−トは二酸化珪素(SiO2)を主成分 とする岩石で、深海底に放散虫(ラジオラ リア)の死骸が堆積してできるといわれて いる。  秩父帯や美濃帯では、このような層状チャ ートがひんぱんに挟まれ、褶曲していること が多い。

<参考文献> 長野県地学会(2001)改訂 長野県 地学のガイド (コロナ社) 長野県地学会(1962)20萬分1長野県地質図説明書 改訂版(内外地図株式会社) (宮坂 晃)
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