国道20号線の長野・山梨県境に釜無川を渡る国界(こっかい)橋がある。この橋の下流約1.5kmの
区間は"ミニグランドキャニオン"と呼ばれている。旧河床面の川原が幅20 〜30m、深さ10mほどえぐられ、
両側の壁は垂直に近く切り立って小峡谷を造っている。これは1982年8月・9月に来襲した台風の豪雨の
ために河床が浸食されて、一夜にして形成されたものである。
峡谷の崖は大部分のところが真っ白な色をしており、一部は緑がかった灰色をしている。白い部分は
花崗岩で、緑がかった灰色の部分は斑レイ岩であるが、いずれも破砕が進んでざらざらと簡単に崩れる
ほどもろくなっている。花崗岩は甲斐駒ケ岳を造っているものと同じで、およそ1000万年前ころ地下深部
で形成された岩石である。
崖の下部の河床に近いところに、白い花崗岩の下にほぼ水平にゆるく成層した礫層が見られるところが
ある。教来石(きょうらいし)礫層とよばれる、およそ20万年前に八ヶ岳山麓に堆積した礫層である。
20万年前の礫層の上に南アルプス側の古い岩石が乗っており、その境の面はゆるく西に傾いている。
これは花崗岩が断層によって礫層の上にのし上げてきたもので、「白州(はくしゅう)押し被せ衝上断層」
と呼ばれている。新潟県の糸魚川市から静岡市まで日本列島を横断する大断層「糸魚川静岡構造線」の
一部と考えられている。
(田中 俊廣)