長野市戸隠の裾花川に沿っては新生代第三紀鮮新世の柵(しがらみ)層や猿丸層が分布している。
これらの地層は、約1700万年ほど前に出現したフォッサマグナ(大地溝帯)の海が、1500万年かけて次第に 埋め立てられて浅海化し、陸化する直前のものだ。従って、岩相も粗粒な堆積相を示し、砂岩や礫岩が卓越 する。 |
戸隠の各地では化石を多産し、多くの研究が
なされてきた。現在、化石を産出した露頭がコ ンクリートに覆われたり、保護のため立ち入り が制限されて自由に観察できる場所は少ない。 裾花川と楠川の合流部に位置する日照田では 猿丸層の牡蠣(カキ)化石層が認められる。上 の写真で白い斑点のように見えるものはすべて カキ化石である。 カキは、天然のものは北海 道のサロマ湖のも のが有名である。サロマ湖は 湖でありながら一 部は海とつながっている。カ キはこのような塩 分の少ない(汽水という)環 境に住んでいて、 汽水になる条件としては、サ ロマ湖のような入 り江、または真水が海に流れ 込む河口などが考 えられる。従ってカキの化石 が産出すると、そ の場所はかつては汽水の環境 だったということ がわかる。このように昔の環 境を推定できる化 石を示相化石という。 . |
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柵層から産出する化石は「掃き寄せ型」と呼
ばれてもともと生息していた場所から海水によ って流されて再堆積したものが多い。従って貝 化石(二枚貝)は二つの殻が離れて片方だけの ものが多いが、ここに産出するカキ化石はほと んどのものが二つの殻がつながっていて、もと もと生息していた場所で化石になったことがわ かる。(下の写真参照) さてカキは写真のように化石礁を作る。住ん でいる場所は河口のような土砂の堆積が盛んな 場所なので、まごまごしていると自分の体が土 砂に埋もれてしまう。それを防ぐためもあろう が、カキは、先に死んだ先輩のカキの殻の上に 住み付き、何世代もそれが続くとカキの化石は 上下に長くなる。柵層からは長さが30cm近い大 きな化石も発見される。 カキ化石層を観察しながら、ここが入り江だ った頃を想像してみよう。 |
(写真下)猿丸層の砂岩層。
細かい葉理が発達している。 また、表面には明礬(ミョウバン)の結晶が一面に張り付いている。 |