洞窟と地下湖(佐久市)
 峠の向こうは他県という峠が多いなか、田口峠は不思議だ。その向こうも長野県だ。山が県境になっている事 が多いのは中世封建時代の名残だと思うが、この峠をだいぶ下がって大自然に覆い尽くされるようにして広河原 集落がある。ここには自然の洞窟がいくつかあり、県の天然記念物に指定されている。 田口峠は、どちらから上っても、まず秩父帯の中古生層、その上に新生代の内山層、もっとも高い所には兜岩 層が現れていて、広河原の洞窟は一番下の秩父帯のチャート層のなかに点在している。  (上写真)本穴。奥の深いところは水が溜まって地下湖が形成されている。
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 洞窟といえば普通は石灰岩地帯 にあるものが多い。石灰岩は炭酸 カルシウムから成り、炭酸カルシ ウムは弱酸性の雨水に溶けやすく 鍾乳洞が形成される。  一方、チャートは一般に雨水の 浸食には強く、特殊な要因がない と洞窟はできない。 (左写真) 本穴の横の層状チャート。 チャートは他に、珪岩、角岩など とも呼ばれる。 (松本火打岩の項参照)
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 広河原には全部で11の洞窟が存在してい る。それぞれの洞窟には本穴、鏡穴、抜穴、 竜王穴などの名前がついている。  これらのうち、いくつかは上下に並んでい て、その方向に断裂帯も認められることから 断層活動により、岩石が粉砕されて、そこか ら選択的に侵食されたとも考えられているが 詳しいことは不明だ。 (左写真) 鏡穴。穴というよりくぼみ状。滝が架かっ ている。天井付近には上下に伸びる断層が存 在しているのがわかる。
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