第四紀の氷河時代には、日本の高山にも山岳氷河が形成された。それらの痕跡があちこちに残っている。 「周氷河地形」とは、氷河形成までは至らなくても極めて寒冷で凍結期が長く、積雪の多い場所で形成さ れると考えられている特殊な地形の事をいう。美ヶ原〜八ヶ岳にかけても「条線砂礫」、「流土階段」、 「環状砂礫」などの「周氷河地形」が観察できる。
(写真上左)車山東斜面に見られる流土階段。山の斜面が階段状のステップを刻んだ状態になり、平ら な部分には砂礫が露出し、斜面の部分に草が生えている。(写真上右)美ヶ原では、階段の高さが50cm以 上にもなる。写真は王ヶ頭直下の北斜面で撮影。
(写真上)鷲ヶ峯の南斜面で見られる条線砂礫。 草の生えている部分と砂礫が現れている部分とが 交互に並び、遠目で見ると細かい縞模様のように 見える。ここでは、筋の方向は、水の流れていく 方向でもあり、冬の季節風の吹く方向でもある。
(写真上)八ヶ岳の亀甲池はとても不思議な池である。きわめて浅い池の底に、多角形をした石の配列 が見られるのだ。このような現象は環状砂礫と呼ばれ、地学の対流の実験に出てくる「ベルナール鍋」 を連想させる。亀甲池の名前の由来は、この写真のように亀の甲羅を連想させる石の配列が湖底に見ら れるからだ。 <参考文献>信州地学教育研会 (1985) 長野県地学図鑑 (宮坂 晃)