半過岩鼻の奇観(上田市)


 上田市と坂城町の境界には岩鼻と 呼ばれる奇妙な地形がある。  西側から伸びてきた平坦な尾根が 急に断ち切られ(写真1)、中央部 には大きな穴が空いているのである (写真2)。 坂城町では”昔ここに棲んでいた 大ネズミがかじってできた穴だ”と いう言い伝えがあり、おもしろいこ とに、ここからすぐ下流側に鼠 (ねずみ)という地名までもがある。  岩鼻は、この周囲に分布する別所 層に貫入してきた石英角閃石ひん岩 岩体からなり、柱状節理が発達して いる。  この断崖は千曲川の浸食によって できたもので、中ほどにある30mほ どのへこみは、昔の千曲川が削った 跡と考えられている。 また、崖の上は平坦面となっており ここに昔の千曲川が運んだと思われ る河床礫が乗っている。このことか ら、千曲川の河床が時代とともにど んどん下降してきたことがうかがえ る。  この対岸に見られる上田市 塩尻 の崖は内村累層の緑色凝灰岩(グリ −ンタフ)が露出しており、両者の 岩質は異なっている。このことから この二つの崖の間に千曲川断層と呼 ばれる断層が存在する、という説が ある。
  この崖の石をよく見ると、ひん岩中に白い捕獲岩が大量  に入っている。(写真3)   捕獲岩とは、この崖を作ったひん岩のマグマが地下深く  から上昇してくる際に、周囲の石を削り取ってきたもので  ある。したがって、この捕獲岩を調べることにより、地下  の岩石についての情報が得られる。   この捕獲岩の周囲には放射状の節理が発達していて、  マグマの冷却の仕方について示唆を与えてくれる。  <参考文献>  信州地学研究会 (1985) 長野県地学図鑑 (宮坂 晃)
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