上高地(1)


   上高地は長野県の中でも集客力が5本の指に入る   観光地であるが、地学的にも見どころがいくつかあ   る。美しい自然を地学の目で見るとまた地球の魅力   が増すというものである。    上高地の入り口に大正池がある。この池は1915年   (大正4年)の焼岳の噴火の際に泥流が発生し、梓   川を堰き止めてできたものである。    焼岳はトロイデ式(溶岩円頂丘)の火山で、この   タイプの火山は粘りけの多い性質のマグマの活動に   よってでき、噴火時は火砕流が発生するなど危険な   火山である。山体の下半部は火砕流堆積物や泥流堆   積物からなり大きなガリーができている。上部に溶   岩ドームが乗っている。   (写真左上)上高地からの焼岳。現在でも頂上付近         から白い煙が立ち昇っている。   (写真左下)焼岳溶岩。黒い細長い斑晶は角閃石。         白い大きい斑晶は斜長石
↑    ↑ ↑ ↑  ↑     ↑       ↑ 西穂高岳(2902m) 天狗岳 奥穂高岳(3190m)  吊り尾根  前穂高岳(3090m)  間の岳 畳岩
 (上写真)上高地から望む穂高連山。奧穂高岳は日本4位の海抜高度を誇っているが、2位の南アルプス 北岳とは3m程度の差しかない。奧穂の頂上には高さ3mのコンクリートで固められたケルンが作ってある。  この写真に写っている部分はほとんど穂高安山岩類と呼ばれる岩石からなっている。かつて穂高岳から槍 ヶ岳を構成する岩石は半深成岩のヒン岩に分類されていたがその後研究が進み、大部分が安山岩質の溶結凝 灰岩であることがわかってきた。  新生代第三紀終わり頃に極めて大規模な噴火がここで起こり、噴火直後にできたカルデラ内に高温で厚い 火山灰が堆積し、その火山灰が自分自身の熱で再度溶けて固まり非常に硬い岩石ができたという。 穂高岳を構成する岩石は火成岩ではあるが、山自体は普通の火山のように地表に噴出物が積み重なって高 くなったのではない。膨大な噴出物を吹き出して山体が陥没してカルデラができ、地下深くに埋積した噴出 物が、その後の地殻変動により激しく隆起したためである。          写真提供 藤田伸二氏           <参考文献>           地学団体研究会(1999)第53回総会シンポジウム・ポスター要旨集           地学団体研究会松本支部(1995)信州の地質めぐり           松本市教育委員会ほか(1983)松本盆地の生いたちをさぐる                                     (宮坂 晃)
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