鹿塩温泉(大鹿村)

大鹿村の鹿塩(かしお)温泉は、伊那谷で最も古い温泉で、その名前からもうかがえるように塩泉(正式 には、含硫黄-ナトリウム塩化物冷鉱泉というらしい。源泉温度は14℃で、温泉の温度基準からは最も温度が 低い冷鉱泉という分類になる。)である。
  その塩分は4%と、海水の塩分(37パーミル)  とほぼ同程度で、かつては岩塩を求めて採掘も行 われた。しかし岩塩層はついに見つからなかった。   (左写真)温泉近くにある岩塩を求めて掘った  坑道跡。  温泉は、三伏峠付近に源を発する塩川沿いに位  置し、村を南北に縦断している中央構造線からほ  んの少し(数百m)東側に寄った所にある。  従って温泉の周囲に露出している岩石は三波川帯  の結晶片岩である。
村内の地名を見ると、同じように中央構造線の東側には大塩、小塩、塩原、塩河などの地名が見え、中央構 造線、もしくは三波川結晶片岩と塩とが深く関係しているように見える。  塩分が海水とほぼ同じであること、三波川帯はかつての海溝付加堆積物が変成作用を受けたものであること などから、かつて海溝から地下に押し込められた古海水が断層の割れ目に沿って上昇してきている・・と考え られたこともあった。しかし実際はそう単純なものではないらしい。それは海水中には塩化ナトリウムの次に 多く存在するマグネシウムイオンが極めて少ないのだ。だから古海水ではない。 ではどこから? まだまだ謎の多い塩水らしい。
(↑)河床に現れている三波川結晶片岩     (↑)中央構造線が通過してできているケルンコルとケルン 写真では赤っぽく写っているが緑色の緑泥石片岩  バット。鹿塩温泉のすぐそばを通過している。
 中央構造線をまたいで内帯側に入ると、鹿塩マイロナイトが現れてくる。中央構造線に沿って貫入してきた 閃緑岩が、比較的低温の環境下で、断層の動きによりずるずると引き伸ばされてできたらしい。  (左上写真)大鹿村文満のマイロナイトを採掘している露頭。露頭全部、灰色の石はすべてマイロナイト。  (右上写真)マイロナイトのクローズアップ写真。石自体は非常に硬い。高速道路の敷石に使うそうである。
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