小諸層群は、今から400万年ほど前(新生代 第三紀の鮮新世)に、小諸市から諏訪市にかけ て存在した大きな湖に堆積した地層である。この湖がどのようにしてできたのかを教えてくれ る重要な露頭が長門町にいくつかある。ここでは、この地層をとりまく周囲の、より古い地層 (基盤岩)との関係はほとんどの場所でアバット不整合の関係になっている。アバット不整合 とは、より古い時代の地層の作る高角な不整合面に、より新しい時代の地層が水平にぶつかる ように堆積して形成される不整合の形態を示す言葉である。 上の写真は、長門町滝ノ沢にある貯水池の後ろ側に見られるアバット不整合面で、ちょうど 人の立っている場所が境になり、それより左側が古い時代の周囲の地層で(内村累層:新生代 第三紀 中新統、1600万年前)、右側がより新しい地層(小諸層群:新生代 第三紀 鮮新世 (400万年前)の地層である。
Bの写真はこの不整合面の接近撮影 で、現在はこの露頭は草が生い茂って なかなか見にくいが、草をかき分ける と境界面が見えてくる。 左側は内村累層の緑色凝灰岩で、右 側は小諸層群の礫岩である。礫岩中の 礫は、ほとんどが右側の緑色凝灰岩の 角張った礫で構成されている。 このような不整合は、かつて、この 場所で基盤が陥没を起こし、できたへ こみに、より新しい地層が堆積したと 解釈されている。従って、小諸層群を 堆積させた大きな湖は、基盤の陥没に よってできたことになる。
Cの写真は、同じく基盤岩と小諸層群の接し方を示す露頭で、左端が基盤の内村累層に属する 緑色凝灰岩で、中央部の斜めの地層および右側の水平な地層が小諸層群の地層である。 この露頭は国道142号線の改修時に現れたもので、現在はコンクリ−トに覆われてしまって残 念ながら見ることはできない。
Dの写真は、小諸層群中に見られるアバット不整合の写真である。下位の茶色の地層は新生代 第三紀鮮新世の大杭層と呼ばれる地層で、上位の地層は第四紀更新世の北御牧凝灰角礫岩層であ る。下位の大杭層が引きずられるように下に落ち込んでできた高角な不整合面に対して、上位の 地層が水平にぶつかっている。 <参考文献> 山岸猪久馬(1988)鮮新ー更新統小諸層群の基底に見られるアバット不整合とその意義. 地球科学,42, 159-163. (宮坂 晃)