松本盆地東縁断層群

 松本市から大町市にかけては、安曇野の平らな部分 と東側の山地との間に松本盆地東縁断層群と呼ばれる 断層群があるとされている。(右図の黒線)  山と盆地の境界線は非常に直線的で、いくつかの山 の尾根が途中ですぱっと切れ落ちている事などから断 層の存在が推定されているのである。  安曇野を通過する糸魚川静岡構造線(以下、糸静線 と呼ぶ。)が盆地のどこを通過しているのか、という 問題は昔からいろいろ議論されてきたが、地質調査所 (産業技術総合研究所地質調査総合センター)から刊 行されたストリップマップによると、図の赤い線付近 を通過する、という。少なくても、明科以北は東縁断 層は糸静線そのものだということになる。また、一部 は左横ずれを示す活断層だという。  糸静線は新生代第三紀中新世の頃に活動が始まった。 できた当時は、この大断層の東側が落ち込みフォッサ マグナ(大地溝帯)を形成した。すなわち、始めは東 落ちの正断層だったわけである。
  しかるに、現在は、小地震の解析から、松本以北の糸静線は東傾  斜の逆断層(東側の岩盤が西側の岩盤に対してのし上がる)動きを  していることがわかっている。また、松本から諏訪を経て山梨県  韮崎付近までは左横ずれ断層、そこから南側は、西傾斜の逆断層  (西側の岩盤が東側の岩盤に対してのし上がる動きをしている)で、  それを模式的にあらわしたのが右図である。   このように糸静線は、時代的にも空間的にも複雑な経緯を持つ。   最近は、この糸静線が北アメリカプレートとユーラシアプレート  の境界ということになってきて、長野県の北半分は地質学的には北  アメリカ大陸とつながっていて、南半分はユーラシア大陸とつなが  っている、という。
 (↑) 松本トンネルの料金所付近から北方向を撮影したもの。直線的に尾根が
切れていて断層の存在を暗示させる。この境界部を篠ノ井線が並走している。

 光橋のたもとには緑色変質した礫岩が 河床に現れている。もともとこの礫岩は 大峰帯のものらしいが大きな断層のそば にあったため変質や破壊を被っている。 かつてこのそばでは大峰帯と第四紀礫層 が接する断層や、水内帯と大峰帯が接す る断層が地表に現れていたという。この 場所は重要な断層が通過している。また 大峰帯が河床に現れていることから糸静 線はここより西側に存在することになる。
<参考文献>  信濃毎日新聞社編集局編(1998),信州の活断層を歩く.信濃毎日新聞社.  地質調査所(1995),糸魚川静岡構造線活断層系ストリップマップ.    近藤久雄ほか(2006),糸魚川−静岡構造線活断層系・松本盆地東縁断層南部に沿う 左横ずれ変位地形.活断層研究センターニュース,no.58,2006年7月号.   大塚勉・山岸由佳(2012)松本盆地南部の変動地形と地質.地団研第66回総会講演要  旨集・巡見案内書. (宮坂晃)
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