松本市 美鈴湖のAT

 ATとは地質屋さんには有名な火山灰層で、正式には姶良Tn火山灰と呼ばれる。 今からおよそ2万5000年前に、現在の鹿児島湾にかつて存在した火山が大噴火し、日本中に火山灰 をまき散らした。富士山が約10万年かかって今の大きさの山体を形成したのに比べ、この時の噴火 は数週間(おそらく2週間)で、富士山の体積の2倍の火山噴出物を放出したと言われ、世界最大 級の噴火であったと思われる。  一般に日本では、火山灰は上空を吹く偏西風によって火山の東側に多く堆積し、この火山灰は四 国の指宿で50cm、京都で20cm、長野県においては10cm内外の厚さで堆積している。 (写真中の中央やや上部にある白っぽい地層がAT)

 美鈴湖から浅間温泉に下りる道沿いに約7cmの薄黄色のATが褐色のロ−ム層中に挟まれている。 上と下の褐色のロ−ムは御岳火山の火山灰が厚く堆積したものである。  ATを採集し、碗がけして洗って顕微鏡で観察すると、ほとんど火山ガラス(バブルウォ−ル型) ばかりから成る特徴的な火山灰である。 <参考文献> 田中邦雄監修(1983)松本盆地の生い立ちを探る 松本市・東筑摩塩尻・南安曇・北安曇教育委員会 松本市史編さん室 (1994) 松本市史 第一巻 自然編抜刷 第二章 地形・地質 降籏和夫 編(2001)改訂 長野県 地学のガイド        

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