長和町の黒曜石

    霧ヶ峰一帯は黒曜石の産地として有名だ。黒曜石は、酸性の火山岩(流紋岩や松脂岩)質マグマ が急冷されて、ガラス状に固まったものである。岩石の性質(酸性=マグマ中の二酸化珪素が多く 粘性が高い)と、冷却速度の条件(=急冷)が重ならないと形成されないので、日本では産出する のは北海道、長野県(霧ヶ峰・八ヶ岳)、静岡県伊豆半島、島根県など限られている。  霧ヶ峰一帯では、男女倉、和田峠、星糞峠、星ヶ塔、星ヶ台、東俣などで黒曜石が産出するが、 これらのうち、星糞峠以外は流紋岩、星糞峠のものは松脂岩由来である。

    黒曜石は、上の産出地名でも  想像できるように、黒く、きら  きらと光る石なので昔は天から  降ってきた石と考えられたよう  だ。   黒曜石はその硬さや特徴的な  割れ方(貝殻状断口)のため、  石器の材料となった。他の国で  も黒曜石は石器の材料となって  おり、古代人が石をよく吟味し  適当な素材を探して野山を駆け  めぐっていたことがわかる。   (←)黒曜岩露頭。   ここでは200mにわたって黒  曜岩のみが露出する。地表に  長く露出していると風化して 粉々になってしまうので、石 器を作るような大きい塊の石  は滅多に取れない。

    最近は石器の黒曜石に含まれる微量元素の分析や内包物の差異によって、日本各地の遺跡から 産出する石器に使われた黒曜石がどこで取れたものか決定できるようになった。この結果、霧ヶ 峰付近から産出する黒曜石は、北は青森県の、文字通り“教科書に書かれた縄文時代の生活観を 一変させた”三内丸山遺跡、また、南は近畿地方の桜ヶ丘遺跡でも見つかっており、霧ヶ峰は約 3万5千年前の旧石器時代から縄文時代に至る3万年の間、全国に石器を供給し続けたのである。

   鷹山星糞峠は黒曜石原産地の国史跡に指定された。現在、明治大学が中心となって発掘調査が 続けられ、古代人が黒曜石を探して掘った“鉱山跡”が多数見つかっている。そして、この麓の 鷹山遺跡や男女倉遺跡は1万5千年前の旧石器時代の石器製作所群だったことが判ってきた。 (写真↑)一番へこんだ部分が星糞峠。峠の右側の白い部分に黒曜石鉱山跡が密集している。 下の集落が鷹山。中央やや左の白い建物が明治大学の研究センター。「数万年間の人類の歴史を これから数百年かけて調査する」との宣言に思わず頷いてしまう。この庭には1mを超える大き な黒曜岩の標本が置いてある。また、センターの横には黒曜石体験ミュージアムがある。

   (写真↑)黒曜石のクローズアップ。白い斑点は長石の結晶や球顆状の内包物。右上に特に大き いものが見える。  黒曜石は水分が多く、加熱すると水分が発泡して多孔質の白い石になる。こうしてできるのが パーライトで、和田峠の長和町側にも諏訪側にもパーライト加工工場がある。   (宮坂 晃)



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