”牛に引かれて善光寺参り”で有名な布引観音(釈尊寺)は、千曲川の河床から100mほど急なつづら 折りの道を登ったところにある。この参道の途中に露出している地層は小諸層群の布引層(布引観音層) と呼ばれ、新生代 第四紀 前期更新世の凝灰角礫岩から成る。
参道途中で観察される凝灰角 礫岩。 凝灰角礫岩は、火山から放出 された火山灰や溶岩の破片など が堆積したものである。 写真の中でごつごつした部分 が安山岩質の火山角礫で、凝灰 質砂層中にこの角礫が大量に含 まれている。
布引観音から西に1キロほどいった所に布岩と呼ばれる 景勝地がある。 これは、黒っぽい布引層中にできたほぼ垂直な亀裂の中 を、白っぽい凝灰岩が埋めてできたもので、黒い断崖に白 い布がたなびいているように見える。 伝説によれば、強欲なお婆さんが川で洗濯をしていたと ころ突然牛が現れ、洗っていた布を角に引っかけて持って いってしまった。牛を追いかけたお婆さんがたどり着いた ところは善光寺でそれから改心した。このときの布が布岩 になったのだという。 (宮坂 晃)