入笠山(富士見町)
入笠山(にゅうかさやま)は南アルプスの北限に位置し、山の北東側の麓を糸静線が通過していて 北側は直線的に切られて落ち込み、地形的にもフォッサマグナを認識できる。北東側に遮るものがな いぶん展望に優れ北・中・南アルプスを遠望できるほか、何といっても目の前に広がる八ヶ岳の全景 は圧巻である。
 (左上写真)入笠山からの北アルプス南       部穂高連山および槍ヶ岳  (右上写真)中央アルプス北部、宝剣岳       と木曽駒ヶ岳  (左写真)八ヶ岳南部及び関東山地方面      手前の花はシシウド
 入笠山はほとんどが西南日本外帯の秩父帯の南帯に属し、頂上付近は緑色岩類(海底で噴出した玄 武岩や凝灰質頁岩など)が現れている。牧場付近には泥質岩が分布し、この中に大小様々な大きさの チャートの岩塊が混在している。これらの地層は中生代ジュラ紀に南太平洋に堆積した地層がプレー トの動きによって日本に運ばれ、海溝で付加したものである。  牧場北側には秩父帯の南帯と北帯の境付近に位置する戸台層の砂岩層が現れている。 戸台層は白亜紀の地層で、下位の秩父帯を構成するジュラ紀の地層に対して本来は不整合の関係で重 なっていたと思われるが、現在、両者は多くの場合断層で接している。
(左上写真)牧場内に転がるチャート岩塊。これは1m程度だが、牧場の真ん中には10mを超えるブ      ロックが陽を受けて輝いているのが遠くからも見える。 (右上写真) 戸台層(砂岩層)
(左上写真)入笠山は豊富な高山植物と高山蝶で有名だ。数十万株を数えるスズラン等、時間を追っ      て多様な花が入れ替わり咲く。写真はシロヤマギク、ウツボグサなど。牧場で撮影。 (右上写真)ホテイアツモリソウ( Cypripedium macranthos var. hotei-atsumorianum Sadovsky)   かつては南アルプス登山道沿いでよく見ることができたが、今はめったに見られない。      下界に持って行っても育たないのに盗掘する稚拙者がいるからだ。なお富士見にあるもの      は「釜無アツモリソウ」という独自の名前が与えられているが、亜種なのかローカルネー      ムなのか判らない。この写真は入笠山より南の別の場所で撮影したもの。(場所は教えら      れない) 
      ↑   ↑       ↑     ↑    ↑ 八ヶ岳裾野  鳳凰三山   甲斐駒   仙丈岳   入笠山 (上写真)霧ヶ峰からの入笠山   八ヶ岳と南アルプスの境界を糸静線が走っている。    入笠牧場から芝平峠、金沢峠を経て杖突峠に至る道路があって、下界と異なる景色や露頭が観 察できる。西に向かって、御荷鉾(みかぶ)帯、三波川帯(黒川層群)、塩嶺累層、守屋累層な どが順に現れる。    <参考文献>     信濃毎日新聞編集局,1998,信州の活断層を歩く,信濃毎日新聞社   天竜川上流工事事務所,1984,天竜川上流地域地質解説書,中部建設協会                                       (宮坂 晃)

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