御岳山噴火(その2)

  2014年9月27日、11時52分御岳山(3067m)が、平成19年以来7年ぶりに噴火した。 1.山ブーム、2.紅葉シーズン、3.土曜日、4.天候も良く、5.ちょうど山頂近くで昼食をとっていた時刻、 と多くの不運が重なり多数の登山客が巻き込まれてしまった。この噴火で亡くなった方57名、行方不明6名(10月 23日現在)と、戦後火山噴火災害で最悪の事態となった。
(左上図)火山性地震の記録。噴火の11分前から火山性微動が始まり、7分前からは起こりっぱなしの状態になっ ていることが判る。(長野県発表) (右上図)噴火直後に火砕流が発生した。噴火で数千mに吹き上げられた噴石柱が地表に落下し、南西側と北西側 の斜面に沿って流れ下った。この写真は南西側に約3km流れ下ったもの。(国交省中部地方整備局滝越カメラ)
(上写真)御岳山の南側から撮影した噴火口。国土地      理院撮影 (左図)噴火口の概念図   噴火はまず地獄谷の西側のA火口から始まり、時  間の経過とともに東側に向かって新たな火口が次々  と生まれた。地獄谷内のB火口が開いた時に、山頂  及び八丁ダルミ方向めがけて多数の岩塊が時速数百  キロの速さ(400〜500km/h、最大700km/h)で射出  された。亡くなった多くの方はこのときの弾丸のよ  うな岩石を主に頭部に当たって損傷を受けたのが致  命傷になった。熱風による火傷で亡くなった方はわ  ずかだったという。
 御岳山は有史以来4回の噴火をしているが、これらはすべて水蒸気爆発である。水蒸気爆発は地下のマグマに よって熱せられた水分が体積を膨張させて地表に噴出する現象で、地下のマグマが地表に噴出する普通の噴火で はない。この際に火道近くにある岩石が水蒸気の猛烈な圧力により粉砕されて水分と一緒に噴き出す。これが火 山灰や火山岩塊となる。今回は山頂付近に40〜50cmの火山灰が降り積もり、噴出した岩石は数十万トンと、過去 の噴火に比べるとかなり多量だった。  各々の火山の噴火様式は個性があり、そのくせを知らないと予知はできない。今回は予知ができなかったが、 それはあまりにも情報量が不足していたからであった。マグマ噴火の場合は噴火が近づくと、多くの火山では火 山性地震が地下深くから地表近くに向かって移動しながら起こる、山体が膨らむなどの前兆現象が起こる。今回 はそれらの現象が観察されなかった。噴火の度に発生する水蒸気爆発独特のデータを集める必要がある。  では、全く前兆現象がなかったのかと言うとそうでもない。噴火5日前に山体の途中から噴煙が上るのを見た 人がいる。また、普段はしない硫化水素の臭いが数日前からきつかったという証言もある。今回は入山規制が敷 かれなかったために多数の噴火口近くでの噴火の写真や動画が撮られていた。このような前兆情報をひたすら集 積し分析していくしかない。  噴火直後から警察・消防・自衛隊が我が身の危険を顧みず捜索を行った。10月中旬になり山頂は雪が積もって 捜索は困難になり今年度の捜索は打ち切られた。   <参考文献>    信濃毎日新聞・毎日新聞・読売新聞・朝日新聞(9月27日〜10月23日発刊号)                               (宮坂 晃)
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