大杭背斜
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 小諸市から、千曲川のほとりの湯ノ瀬 温泉に向かう吊り橋(大杭橋)の500m ほど上流に、この付近に分布する小諸層 群の大杭層中に見られる背斜構造が観察 される。この背斜構造は大杭背斜と呼ば れ、糠塚山から入の沢に向かって伸びて いる。この背斜構造は背斜軸の南翼側の 地層が急傾斜で北翼側がなだらかな傾斜 をした、非対称褶曲である。  写真は、南翼側の通称”なぎなた岩” と呼ばれている崖で、凝灰角礫岩の地層 が下部は垂直に立ち上がり、上部は緩や かに曲がっていて、背斜構造が良く見え る。
  この背斜軸の軸部には、小諸層群の最下位層  となる小諸溶結凝灰岩層が千曲川河床に現れて  いる。写真は大杭橋南で撮影。   この地層は約400万年前(新生代第三紀鮮新世) の地層。まるで堤防のように見える。   背斜軸はこの溶結凝灰岩露頭の50mほど奥  (写真の右側)を通過している。
  道路工事で現れた大杭背斜軸部  (現在はコンクリートに覆われてしまって見る  ことができない。)溶結凝灰岩層がへの字に曲  がっている。   大杭背斜は地形にも影響を与え、大地の縁を  構成している。従ってこの背斜構造は非常に若  い時代に形成されたものと考えられる。
 背斜の北側を撮影。 上半分は大杭層に不整合関係で乗っている松葉川泥流と呼ばれる地層。シャープに下位層を切って いるが背斜軸部の溶結凝灰岩は非常に硬いため、上に凸の形で突き出している。  写真の下半分は大杭層。右端は溶結凝灰岩層で、この上に整合に泥岩・砂岩が重なっている。写 真の左端に厚い凝灰岩層が表れる。 <参考文献> 飯島南海夫ほか (1956) いわゆる”塩川層”の地質.地質学雑誌,62.  (宮坂 晃)
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