大町市の南部常盤の高瀬川河床には市の天然記念物指定を受けている「常盤岩」がある。近くの道沿い
には案内板や説明版もなく少々心もとないが、焼却場を目印に河床に降りると見つかる。今にも白い河床
れきに覆い尽くされそうになりながら薄褐色の岩盤が小規模に現れている。これが「常盤岩」である。
川の砂利の中に基盤の岩石が出現したくらいで、どうして天然記念物になるくらいの重要な地質学的意
味があるのかというと、大町市の真下を、日本を二分する「糸魚川−静岡構造線」と呼ばれる大断層が通
過している。「糸静線」の西は古生代や中生代の古い岩体が多く、東側には新生代第三紀中新世(1500万
年前)以降の岩体が多く分布している。新生代中新世に日本列島を二分する大事件が起きたのだ。
さて、大町市は高瀬川からもたらされた膨大な砂利に覆われていて、「糸静線」の詳しい位置は判らな
いままである。常盤岩の出現によって、その位置が絞られてきた。それは常盤岩が東側の大峰帯(新生代)
の石なので、「糸静線」は、ここより西側に存在することを示しているのだ。
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