大峰帯の地質(池田町)

 明科町から小谷村にかけての東側にある丘陵には大峰帯と呼ばれる南北方向に伸びた細長い地質区 が存在している。この大峰帯は北部フォッサマグナ区の最西部に位置し、「糸魚川静岡構造線」に接 していて、その存在する位置や、構成する堆積物の特異性などから研究者の注目を浴びてきた。
(写真上)大峰帯は新生代第三紀鮮新世から第四紀にかけて堆積した大峰累層と呼ばれる地層から成 る。大峰累層は写真のように膨大な量の礫岩から成り、扇状地の堆積物と似ている。従って、大峰帯 はフォッサマグナ区が陥没した後、次第に埋め立てられ一旦陸化した後に再陥没が起こり、西側の北 アルプスからもたらされた砂利などが堆積した地帯と考えられている。なお、礫の構成を調べてみる と、真横の北アルプスの構成岩石とは一致せず、南北方向の横ずれ断層が活動したとの説もある。  大峰累層中にはいくつかの凝灰岩(火山灰)が挟まれている。下の写真は鷹狩山凝灰岩と呼ばれる 火山灰層で、遠く岐阜県で噴火した火山から飛来したものと考えられている。
 県道宇留賀−池田線沿いの鷹狩山凝灰岩。
左写真は遠景。右はクローズアップ。白く細長いの
は軽石で、黒い粒は輝石鉱物である。
  大峰累層の最上部付近には溶結凝灰岩が挟ま  れている。溶結凝灰岩は、激しい噴火によって  吹き出した火山灰などが高温のまま地上に堆積  し、自分自身の熱によって一部が溶け、その後  冷却して固まったものである。暗灰色〜黒色で  節理が発達している。石を割ってみると、同じ  方向に伸びた黒いレンズ状のガラスの部分が認  められる。  (写真左)白色の地層から上位が溶結凝灰岩  (写真左下)溶結凝灰岩のクローズアップ  (写真右下)溶結凝灰岩の節理
<参考文献>   日本の地質編集委員会(1988)日本の地質T「中部地方T」,共立出版   長野県地学教育会(1989) 信州・大地のおいたち,信濃教育会出版部   信州理科教育研究会(1996)大地は語る,東京法令出版   信濃教育会(1953)信濃の地質見学の旅   信濃教育会(1967)信濃の化石採集の旅   地学団体研究会(1988)長野の地質案内   自然観察資料集作成委員会(1990)松本盆地のおいたちをさぐる,松本市教育委員会ほか    地学団体研究会松本支部(1995)自然ハイキング信州の地質めぐり,郷土出版社   信濃毎日新聞社編集局(1992)信濃すと〜ん記,信濃毎日新聞社         (宮坂 晃)
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