大鹿村の中央構造線観察
 大鹿村は村の中を中央構造線が南北に縦断しており、この大断層に関連する地形、露頭や岩石を 間近によく観察でき、村全体が博物館となっている。このなかで、村や教育会の方々によって整備 された2つの露頭は必見である。   安康露頭(写真↑) 村の南側の入り口、地蔵峠は中央構造線の断層鞍部である。峠頂上を通過する道の法面にはかつ て、断層が現れた。峠を降りきる所に安康露頭がある。道から歩いて3分の青木川河床にこの露頭 がある。この写真は南側から北側を向いて撮った写真で、向かって左側(西側)の赤茶けた岩体は 内帯側の珪長質岩(酸性の火成岩)(カタクラサイト)で、左側の緑色の岩石は外帯側に属する三 波川帯の結晶片岩類である。黒い部分は断層粘土(グージュ)で、三波川帯由来のものらしい。 見てわかるとおり内帯側の岩石と外帯側の岩石が交互に現れ、また、三波川帯中には新鮮なすべり 面を持つ高角な、または東傾斜の低角な断層も見え、中央構造線の複雑な歴史を物語っている。  なお、この写真は岩石の違いをはっきりさせるため、色の違いを多少強調してある。
ケルンコル(写真←)  青木で見られる中央構造線に伴うケルン コルとケルンバット。 断層部は岩石が破壊され、浸食されやすく なるので、地形的な凹みを作る。(ケルン コル) 断層は写真中央の小高い丘(ケルンバット) の左側(東側)を通過している。
北川露頭(写真↑) 村の北側の出口、分杭峠を登る途中に北川露頭がある。道路から歩いて5分、鹿塩川の河床に目 指す露頭がある。左の写真は北側から南側を向いて撮った写真で、黄色い線が中央構造線である。  右側の写真は南側から北側を撮影したもの。黒い断層粘土(グージュ)と、緑色の三波川結晶片 岩の間が中央構造線とされている。この露頭の剥ぎ取り露頭が中央構造線博物館に展示されている。  多くの場合、中央構造線は西傾斜であるが、写真で判るように、ここでは東傾斜である。これは プレートの動きによって伊豆半島が日本列島に衝突したため、南アルプスが隆起し、また、古い地 質体がめくれあがるような動きをしたからだと、地元の研究者、松島先生は考えている。 <参考文献> 松島信幸ほか(1993) 伊那谷構造盆地の活断層と南アルプスの中央構造線 市川浩一郎(1981)概論:中央構造線,月刊地球,海洋出版 端山好和ほか(1981)中央構造線−その出生の秘密−,月刊地球,海洋出版 信濃毎日新聞社編(1998) 信州の活断層を歩く,信濃毎日新聞社 信州理科教育研究会(1994) 台地は語る 建設省(国土交通省)天竜川上流工事事務所 (1981) 天竜川上流域地質図,中部建設協会                                   (宮坂 晃)
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