志賀高原の地学(山ノ内町)
志賀高原は2000mを超えるいくつかの山々と70近い湖が点在する風光明媚な観光地である。 年間を通じて自然散策、避暑、スキーなど多くの観光客が訪れる。ここはもともと佐久の志賀 出身の財閥が開発したことから「志賀高原」と呼ばれるようになったのは有名な話だ。 志賀高原の山々はすべて火山で、湖も火山の活動に伴って形成された湖が多く、志賀高原の 地形は火山活動によって造り出されたものだ。こうした火山の活動はおおよそ150万年前に始ま り、1万年前頃まで続いたが、活動した時期によって古期と新期に分けられている。
(上写真)渋峠南方から見た横手山(中央奥の山:2304m)今から65万前の火山活動で形成さ れた。長野県側(左側)は急で、群馬県側(右側)はなだらかなスロープを描いている。  志賀高原では、火山の土台となる基盤岩はフォッサマグナ区の中でも比較的古い時代の岩石 で、しかも非常に高い所まで現れている。これは基盤岩が今から700万年前頃からゆっくりと 隆起をする運動をしたためで、「中央隆起帯」と呼ばれている。志賀高原から四阿山、美ヶ原 にかけての火山は、この中央隆起帯の真上で発生した火山活動による産物である。  写真の横手山も基盤岩は2200mの高さまで現れており、火山本体の高さはたかだか100m程度 しかない。
(左写真)木戸池付近から見た笠 ヶ岳(2076m)。他の火山と比べ て尖った山容が特徴的。形が異な るのは地下から上昇してきた溶岩 の性質が異なっていたからで、粘 りけの強いデイサイト質のマグマ が固まったものだ。  また、志賀高原は火山の恩恵と もいうべき温泉も多数存在し、あ ちこちで自然の湯煙が上がる。
(上写真)群馬県の草津白根山。有史以降も度々噴火を繰り返してきた。山体からは今でも有毒 な火山ガスが所々から出ていて火山情報に目を通さないと危ない。  中央隆起帯の上に存在する火山の性質はよく似ていて、硫黄成分が多いのが特徴だ。この火山 付近でも硫黄の採掘が最近まで行われていた。
(上写真)長野市付近から見た笠ヶ岳(中央の尖った山)と横手山(右側の丸い山)                                      (宮坂 晃)
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