しらびそ高原の地質(飯田市)


  飯田市の東に位置する上村は矢筈トン  ネルの開通によって便利になった。村の  中央部、上村川沿いに中央構造線が南北  に走り、また、東側の北又沢沿いに仏像  構造線が北東−南西方向に走っている。   これら二つの巨大構造線に挟まれた間  に「日本のチロル」として有名な下栗の  里やしらびそ高原がある。しらびそ高原  からは南アルプスの聖岳や赤石岳に向か  う登山道があるが、山の上級者向けの道  である。 (写真1)下栗は、山の急斜面に貼り付く  ように民家が点在している。集落の一番  高いところに広場があり、ここから見る  日没の景色は絶景だそうである。 (写真2)北又沢上流部を見る。 この谷沿いに秩父帯と四万十帯を区分す る仏像構造線が走っている。仏像構造線 は西南日本外帯中を中央構造線とほぼ並 行に走り、九州から始まって四国を通過  し、ここ上村、富士見町の釜無川沿いに  北上し、糸魚川静岡構造線によって一旦  切られるが、川上村に再登場する。中央  構造線に劣らない大断層である。 写真で、谷の左側が秩父帯、右側が四  万十帯になる。
 
(写真3)しらびそ高原に至る御池山エコーラインの道路沿いには、秩父帯の地層が現れ、これ は中生代三畳紀からジュラ紀にかけて海底に堆積した泥質岩を主としチャート、石灰岩、玄武岩 質溶岩などを挟む地層から成る。尾根の高い部分には堅くて浸食されにくいチャート層が多く現 れている。  写真はチャート層中のデュープレックス構造。両側のチャート層はまっすぐ垂直な構造をして いるのに対し、中央部のチャート層は強く波打っている。縞状チャート層中にはよく現れる構造 である。 (写真4)南アルプスは別名「赤石山脈」とも呼ばれるが、これは南アルプスを構成する秩父帯 や四万十帯の地層中に赤色のチャートや赤色凝灰質頁岩層を頻繁に挟むからであり、この道路沿 いのあちこちでも見ることができる。南信濃村の遠山川沿いや聖岳と赤石岳の中間、塩見岳周辺 で、厚い「赤石」層が現れている。写真はしらびそ高原から地蔵峠に向かう道沿いに現れている もの。赤いチャート層が強く折りたたまれている。  <参考文献>   田中邦雄監修 (2001) 改定 長野県 地学のガイド,コロナ社 坂本正夫   (1978) 下伊那の秩父帯の地質,下伊那教育会研究紀要1 建設省(国土交通省)天竜川上流工事事務所 (1981) 天竜川上流域地質図,中部建設協会    (宮坂 晃)
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