燕岳(つばくろだけ)
  燕岳(2763m)はかつて小中学校集団登山で多く の人に登られていて長野県民にとっては馴染みが  深い山だ。中房温泉が登山口で、燕岳から大天井  岳(おてんしょうだけ)を経て槍ヶ岳に向かう表  銀座コースの始発点ともなっている。   頂上からの展望はすばらしく、中部山岳地帯に  位置するほとんどの山を眺めることができる。   燕岳の山体のほぼすべては花崗岩から成ってお  り、岩肌は白く、かつ岩体が風化してザラザラと  している。山頂では羊群岩のごとく岩の塊が林立  しており、いくつかの岩にはその姿から固有名詞  が与えられている。   (写真左) 燕岳   (写真左下) めがね岩    (写真右下) 燕岳を構成する有明花崗岩のクロー         ズアップ写真。
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 有明花崗岩は古第三紀初め(6300万年前)に北アルプス中に貫入してきた花崗岩で、ピンク色の カリ長石(正長石)が特徴的な粗粒の花崗岩だ。白い部分は斜長石、灰色の部分は石英、黒い部分 は主に黒雲母。
              ↑              ↑        燕岳(2763m)    有明山(安曇富士)(2268m)  (上写真)松本市アルプス公園からの燕岳   燕岳の北の東沢乗越(のっこし)から南東方向へ中房川に沿って、途中の信濃坂からは冷沢 (つべたざわ)沿いに直線的に谷が伸びており、ここを「信濃坂断層」と呼ばれる活断層が通過して いる。美濃帯中に存在し、かつ同じ方向(NW−SE方向)に並走する他の活断層同様に、この断層も左 横ずれ断層である。[このことについては境峠断層の項を参照]   中房温泉はこの断層線上に位置していて、極めて豊富な湯量を誇っている。[このことについては 昼神温泉参照]
 (左上写真)燕岳を有名にしているもうひとつの存在が高山植物の女王と称される「コマクサ」 (駒草)だ。花が馬の顔のように長いのでこの名が与えられた。他の植物が近寄れない高山の栄養 分の少ない砂礫地に深い根を張って群落を作る。従って、コマクサの傍にはコマクサしかない。  (右上写真)燕岳からの槍ヶ岳。槍ヶ岳は麓の松本市や安曇野市からは前座峰が邪魔して見えな いが、長野市や上田市からは見ることができる。    <写真一部提供>西村亜紀子氏

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