日本アルプス槍ヶ岳
5                  10                          120                           3180        アルピニストの憧れ、槍ヶ岳。上の4つの数字の意味がすべてわかった人は槍の通(つう)。 憧れの山は3000mのスカイラインから突如120mの穂先が天空に突き刺さる。槍ヶ岳はよく日本の マッターホルンと称される。ヨーロッパアルプスのマッターホルンと形が似ているためだが、形が 似ているのは山のでき方が同じだからである。
(←槍の夕暮れ。蝶ヶ岳より)  ホルン(horn)とは牛の角 という意味である。角をくり ぬいて角笛ができ、それがや がて細長い楽器、アルペンホ ルンに進化し、そして金管楽 器のホルンになった。
 ヨーロッパアルプスには後ろに 〜ホルンと名の付く山がいくつかある。(ワイスホルン、ベッター ホルン、マッターホルンなど)これらの山の名は皆、牛の角のように先端が尖っていることに由来する。 日本では「尖峰」と訳される「ホルン」は、氷河が山肌を削ってできたものである。 氷河が山肌を削ると、丸いスプーンで削り取ったような地形ができる。これをカール(圏谷)という。 山体が四方八方から氷河によって削りとられると、尖峰ができる。


(写真上)槍沢から見た槍ヶ岳と、上から見た槍沢 カール地形を作った氷河が途中で溶けずに下方に流れ下るとU字谷ができる。槍沢はU字谷だ。 槍沢には氷河により削られた土砂が氷河の末端に堆積してできたモレーン(氷堆積物、三日月堆) や羊背岩なども見られる。数万年前の氷河時代には日本アルプスの峰々は皆氷河を纏っていたのだ。


地学的に槍ヶ岳を有名にしているものが槍の肩の小屋の南方に露出している槍ヶ岳変成岩だ。 おそらく蓮華変成帯に属する結晶片岩(広域変成岩)で、古生代末に変成作用を被ったと考えら れている。槍ヶ岳変成岩は日本列島の最も高いところに分布する変成岩だ。西鎌尾根に転石が大 量に転がっている。なお、槍の穂先は、変成岩よりずっと新しい穂高岳と同じ安山岩(溶結凝灰 岩)からできている。 (写真上)槍ヶ岳変成岩と西鎌尾根から見た槍ヶ岳                                   (宮坂 晃)
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