八ヶ岳(2)蓼科山

 蓼科山(2531m )は八ヶ岳最北端の山で、日本百名山に数えられる。

(左上写真)茅野市から見る蓼科山 (右上写真)佐久市から見た蓼科山   この山は、南側の茅野方向から眺めると三角錐型の美しい山であるが、北側の佐久方向からは 「お供え餅」のような二段構造をしている。この見え方の違いは蓼科山のでき方と密接な関係が ある。佐久側から見える台座のような平たい山は前蓼科山と呼ばれ、この山は角閃石安山岩溶岩 からなる火山である。この溶岩は色が白っぽく粘性が大きく、溶岩円頂丘と呼ばれる火山体を作 る。蓼科山周辺には北西−南東方向に伸びた尾根を持ついくつかの溶岩円頂丘火山がある。蓼科 山の中にも、これと同じ方向に伸びた同じ岩質の古い火山が存在し、この上に輝石安山岩の溶岩 が表面を覆って蓼科山が完成した。ちょうど、チョコレートシロップのかかった「かき氷」のよ うな構造を呈している。最後に山体を覆った溶岩の末端からは溶岩中にしみこんだ雨水が泉とな って湧き出し(たとえば弁天神)、立科町の田畑を潤している。
 古東山道はこの山の麓を通っているが、蓼科山  の秀麗な姿は昔から信仰の対象になったらしく、 いくつかの遺跡が存在している。右写真はそのう ちの一つ、鳴石遺跡。どら焼きのように二つの石 が重ねられ、石を叩くと音が響く。発掘調査の結 果、この石の下にはびっしりと石が敷きつめられ ていた。
  (写真上左)   角閃石安山岩。この白っぽい石が蓼科山の土台を構成 している。黒い鉱物は角閃石。白いのはほとんど長石。  (写真上右)   北八ヶ岳には池が多数ある。山頂付近にこれだけの池 がある山も珍しい。これらの池は新期八ヶ岳火山活動で 流れ出た溶岩がくぼ地をせき止めてできたもので、池の 周りには黒い溶岩塊がごろごろしている。池めぐりをす るのも楽しい。  (写真左)   クモマベニヒカゲ(高山蝶) (宮坂晃)

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