横河川の”きなこ石”(岡谷市)
 横河川流域には地元の人が”きなこ石”と呼ぶ蛇紋岩岩体が見られ、この岩体は横河川 の東側に南北3kmにわたって連続的に分布している。 横河川の支流、中の沢の下流側から最初の堰堤(砂防ダム)の付け根付近にきれいな蛇 紋岩の露頭が見られる。蛇紋岩は写真のように全体が緑っぽい色で、かつ表面にひっかき 傷のような滑り面が一面に付いているのが特徴である。
 蛇紋岩は地表ではあまり見られない 岩石で、低温高圧型の広域変成岩体中 や、大きな断層の境界部に沿って地下 深い所から貫入して現れる火成岩の一 種である。  ”蛇紋”とは文字通り、この石に蛇 のうろこ状の模様が付いているために 与えられた名前であるが、一般に蛇紋 岩は濃緑色のものが多いのに比べ、横 河川に露出するものは黄緑色をしてい るのが珍しい。上と左の写真は蛇紋岩 の表面に見られるいろいろな模様。 写真の横幅約10cm。 
 横河川の蛇紋岩は横河川変成岩(中生代) と、横河累層のたなこば粘板岩層(新生代) との境界部に分布し、この二つの地層を隔 てる断層線に沿って貫入してきたものであ る。この断層こそはフォッサナグナ区内に おける中央構造線の延長部と考えられてお り、重要な意味を持つ断層である。  上の写真は蛇紋岩体と横河川変成岩の境 界部付近。中の沢で撮影。左側が蛇紋岩、 右側が結晶片岩である。また、波線が境界 で、傾斜は垂直に近い。 (宮坂 晃)

●もどる●