高瀬川の奧の奧に、めずらしい国指定の天然記念物がある。それが湯俣の噴湯丘である。 高瀬ダムから往復で5時間。健脚なら日帰りも可能だ。
コースのスタート点に位置する高瀬ダムは 日本一高い(176m)ロックフィルダムだ。 岩石(rock)を積み上げた(fill)造りのダム でダムの中央部に車道が付いており斜面を上 がって行く際には、そのスケールの大きさに 圧倒される。積み重なっている石はほとんど が大きな花崗岩である。 写真はダム湖と針ノ木岳方面。将に水色の 湖水が印象的。
吊り橋をいくつか渡ると河原に目指す温泉沈殿物が堆積して盛り上がった噴湯丘が現れる。 これは国の天然記念物に早くから指定され、平成21年には日本の地質百選にも選ばれた。 (県下には以下の5つが存在している。) (1) 八ケ岳 (2) 上高地と滝谷花崗岩 (3) 御嶽山 (4) 中央構造線 (5) 湯俣の噴湯丘と白骨 温泉の噴湯丘。こうして、長野県が「火と湯」の国だということが判る。
この噴湯丘は河原に湧き出した温泉水中の溶解物が長い年月をかけて湧き出し口付近に沈殿し てできたもので、大部分は石灰質(CaCO3)から成る。噴湯丘の尖った湧き口にはピンク色をした 球状石灰石(霰石)が見られる。(方解石と同質異像)
川のあちこちから湯煙が立って90℃近い温泉水が湧いている。河床を掘って川の水と混ぜる と天然露天風呂が完成する。ただし、ちょうど良い湯温にするのは難しいらしい。周囲の石はす べて花崗岩。(水質は硫黄ナトリウム塩化物炭酸水素塩) また、うめないで熱いお湯の中に食べ物を入れておくとたちまち茹であがる。 <写真提供> 西村亜紀子氏 <参考文献> 大町市観光協会パンフレット