夏はラグビー、冬はスキーと、スポーツで多くの集客力を誇る菅平高原は、四阿(あずまや)火山 の裾野にある。四阿火山は上田市側から見ると穏やかな山容であるが、山の反対側の須坂市側からは、 様相は一転して極めて荒々しい山容となる。これは四阿火山の成因と関係がある。 四阿火山とは根子岳、四阿山、浦倉山、奇妙山と、円弧状に並ぶ山の総称であるが、この円弧は 直径3キロの大カルデラの縁(外輪山)となっている。
カルデラは北側(須坂市側)を向いているた めに火口内に降った雨が米子川に集まって山を 浸食し、荒々しい姿を呈しているのである。 米子川沿いに登っていくと、火山の歴史がよ く判る。火山の土台(基盤岩)は火山の高さの 半分より上まで現れており、上半分が火山噴出 物である。四阿火山の最初の噴出物はきわめて 厚い溶岩(米子溶岩)で、厚さは100m以上に もなる。 写真は奇妙山方向を撮ったもの。写真の下半 分は基盤岩のグリーンタフや泥岩層(横尾層) で、上半部が米子溶岩。
(↑上写真) 厚い溶岩の下には薄い泥岩層を挟む凝灰角礫岩や溶結凝灰岩層が見られる。駐車場 から米子瀑布に向かう道沿いの場所で観察できる。写真は米子瀑布近くの凝灰角礫岩層。ごつごつ した部分が凝灰角礫岩層で、えぐられている部分が泥岩層。これらの層が逆断層で切られている。
(↑上写真)ぶ厚い米子溶岩の北側は断崖となっており、いくつかの滝が架かっている。これらの 滝のうち、不動滝(高さ85m)と権現滝(高さ75m)が相並ぶ景観は絶景とされる。溶岩層には水 平な流理構造と、垂直な節理が顕著である。滝水が落ちるあたりには凝灰角礫岩層が現れている。 米子滝付近では夏は白装束の行者、冬は垂直な崖を登るカラフルないでたちのクライマーに出会う。 (宮坂 晃)