あの春の回想録〜メモワール〜
背番号2&2様へ



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 陽光が差し込んでいる、眩しい優しい光が流れ込んでくる、
その光に照らされて、ガロード・ランは目を覚ました。
眩しい光に照らされて彼が感じた物は中央に添えられているテーブルから
流れてくる、香ばしいパンの香りと洋食器独特の陶器が響きあう音だった。
まだぼおっとしていた彼もようやく目が覚めた。
慌ててテーブルへ行くとそこには丁寧に並べられた朝食が据えてあった
彼女は笑顔でガロードを向かえるとゆっくりと席についた。

「おはよう、ティファ・・」

「おはよう、ガロード」

 二人の日常はこうして始まる、変わる事のないこの瞬間、しかしこれ以上何を求めようと
言うのだろうか、こうして二人がいて、こうして挨拶を交わすことが出来る
彼らにとってこれ以上の至福はないのだ。

「ありがとう、毎日・・」

「うんうん、気にしないで。ここにいられるのもガロードのお陰だから」

「解かった・・・食べ終わったらさ、また行って来るから」

「・・・気をつけて」

 いつもと変わらない会話、ティファは何時も俺の事を想ってくれているそれは
俺も同じだけど・・いやそんな事を考えるのはやめよう。

「大丈夫だよ、それじゃあいってくるから」

 俺は急ぎ足で仕事場へ出かける、建設現場での作業は辛いがもっと
他の場所にいきたいし、まだ見ていない所も沢山ある・・それは勿論良い思い出ばかりって
わけじゃなかったけど・・・・


 カーテンを大きく開け放つ、レールを擦る良い感じの音が耳に入ると同時により明るさを増した
光が眼中に飛び込んでくる思わず目をそむけてしまう、けれどそれも束の間大きく開けたカーテン沿いに
当りの景色を見渡す、どの通りも人で満ち溢れているそれも全ての人々がみんな違う動きを
みせているようだから 面白い、一方通行ではなくそれぞれ、思い思いに露店を見て周ったりしている
それは、この光の中にいる事に感謝しているようにも見えた。
様々な人の出す音に囲まれながら朝食の片づけを始める、
使っている水も昨日の夜よりほのかに暖たかくなっている気がした。
 それを終えるのにそれほど時間はかからなかった、次は・・・・


 現場は相変わらずの蒸し暑さである、それは当然日が昇っていくに連れて増して行った
それをふと思った、当たり前だけどこう感じられるのも生きているからなんだと、
毎日こうして動けるのも何時もと変わらない挨拶を交わせるのも、それのお陰である
こんな事を考えるのは何時以来だろうか、これもこの陽気のせいななのかも知れない


 腕を大きく広げて物干し竿にシーツを被せる、陽光で思っている以上に早く乾きそうな雰囲気
ぱたっと腰を降ろし蒼天の空を見あげる、白い雲が穏やかにけれど確実に流れている
そう言った時の中に私は生きている・・・身体を大きく伸ばす、
座っているのに手はもう空に届きそうである。もっと高く・・・そう思いながら手をもっと高みに伸ばす。
あの時間も同じように流れていたのだろうかそれは無論である、けれどもっと速いスピードで流れていた気がする
それは私の考え方で、ガロードにとっては速く流れているのかも知れない、私にとってはこの時が一番
ゆっくりと流れている、それは確かだった・・・これまで生きている時間の中で一番平穏だと言うのは
私の中では疑い様のない事実だった、時間がゆっくりと流れている、この時をガロードと過ごせる
この時代を大事にしていきたい・・・



 今、ティファは何を思ってるんだろう、俺の事かな・・何考えてるんだろう、青いな・・
みんなもあの青の下に居るんだろうな、もう一度あってみたいな、色々これまでの事を
世界はドンドン変わってるしこれからどうなっていくのかそれこそ思い浮かばない
それでも変わっていない、変われない部分もたくさん見てきた、これも・・・・
全部ティファがいたから・・・ティファがいたから、こうして此処にいられる
 急に外に出たくなって表へ出た。今作っているものも今の所は出来てきてはいるけど
もしかもしたら事故か何かで潰れてしまうかも知れない、それはそれで仕方のない事だ
けれど出来る事ならそう言うことにはなって欲しくない、多分それはここで働いている人が
思っているに違いない、時代もある意味ではそうなのかも知れない・・・
このA.Wが続くのは誰にもわからない、明日にも終わってしまうかも知れない
けど・・・いや、だから今日を生きる。
俺は現場へ戻った、何時の間にか陽は随分傾いていて今日も半分終わったと思った。



 流れ行く雲を見つめながら私は何処を見ているんだろう、もしかもしたら
昨日かも知れないし、去年の事かも、今日、明日の事を見ているんだろうか・・・
それを見るにしても思い浮かぶのはガロードと一緒に歩いている自分、

「次は何処を見に行こうか?」
  
 その言葉を待っている・・けどほんとはそれを聞きたいのかもしれない
生き生きしているガロードを見たい、その彼に私はどう映っているんだろうか
ガロードは頑張ってくれている。私も出来る限りのことをしたい、今以上に。
何が出来るの・・見つけたい・・・今直ぐに。
昨日の夜には気が付かなかったけれど、今改めて見ると、なんて青々しいんだろう
この緑は・・・アレの瞳を思い出す、今となってはもう懐かしい思い出・・・
そしてあの時の事はまだ私自身よくわからない、けれど何かが終わって何かが始まった
そんな時だったという事は今でもハッキリと解かる。
清風と碧の草と青い空の元に私はいる、ガロードも・・みんなも。

「ただいま〜」

 彼の・・・ガロードの声が耳に入った、待ち続けていたガロードが帰って来てくれた
気が付けばもう陽は隠れようとしている。私は彼の方に駈けながらこう叫んでいました。

「お帰りなさい、ガロード!」

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Presented by N.I in 07/09/2002