リク作品
 |
漆黒の空が広がっている、いやもう空とは言えないのかも知れない、
その空間を不思議な気分でフィは見つめていた・・
モニターの方向に手を伸ばしてみる、何を掴むべくでもなく無重力の状態が
続いている、虚無の中に乱雑とした戦闘、双反した光景が眼前に広がっていた
「フィ中尉、新たな敵機を確認した、様相からNT専用機だと思われる、他の
ガンダム型は別の敵機と交戦中、敵機を速やかに破壊せよ」
緊迫した趣で司令官が告げる、成る程レーダー補足範囲のギリギリの部分で
連続した爆発が確認できた。
「フィ、いきます。」
スロットルを目一杯上げて爆発の起きた部分へ向かう、流石に戦闘中域を直進する
わけにもいかず、幾分か遠回りをする事になる、高速で移動する機体に目の止まった
革命軍のMS2機が接近してきた、高性能であると言われるオクト・エイプだと言う事は
機体のスピードから見てハッキリと解かった。
「見ない型だな、新型機か?」
「そうみたいなだな、相手にとって不測は無いと思うが・・」
「余裕だな、お前は・・いくぞっ」
「了解」
短い更新を交わした両機はGXの目前まで急接近した後上下に散開をしていく
一機は上から、もう一機は下から、攻撃を仕掛けると言う彼らにしてみれば慣れきった
戦闘パターンである。
「上下から・・上から行きます。」
そう言うと、再び加速をつける、上昇していく中で肩部に装備されている
サーベルを引き抜く、彼女の瞳と同じ色の澄み切った刃だ。
「大したスピードだ、下から狙い打て、こっちがひきつける」
「了解」
自分達の訓練通りである、敵はシミュレーション通りに動いている
あとは自分達の技量次第である、そう感じながらオクト・エイプもサーベル
を勢いよく抜く、そして2本のサーベルが同時に交錯する。一見した所
同程度に見えるが、サーベルの威力。推力共にGXの方が明らかに上回っている
ジリジリと押されていく自機のサーベルを見ながら、自分についたこの機体よりも
自分の生について考えている事に気がついた、
「野郎っ!」
その不安を打ち消そうとする如く胸部50mmバルカン砲を至近距離で連射する。
例え最新鋭機のガンダムと言えど操縦するのは人である、自機への直撃を察知して
慌ててオクト・エイプから間を空ける。
「ちょっと不味いかもな・・」
「さっきまでの余裕は何処へ消えたんだ?
まぁ良いさ、墜とせば良いんだからな!援護しろ」
「まてっ・・くそっ・・」
あの機体は接触するまでわからない、何かがある、少なくとも接触した自分には
あの機体に向かっていくだけの勇気も気力も無くなってしまっていた。
「さっさと墜ちれば良いんだよっ!」
ビーム・ライフルを狙いを定めながら撃つ、敵は純白のMS当てるのは簡単である
そう思っていたが矢先、撃った時には既に別方向へと方向を変えているガンダムの姿が
目に映った、そして自分のほうへ真っ直ぐと飛んでくる姿を。
「冗談じゃない、スピードが度を越えてる、援護しろよっ」
「解かっている、だが狙いが全く定まらないんだ。」
「馬鹿にしやがって・・」
サーベルを抜き放ち敵機に一直線へ向かっている僚機。その姿を見送りながら
必死でライフルを放つ、どの弾も機体をかすめて飛んでいくばかりで命中とは程遠い
味方機もバルカンを撃ちながら応戦する様が確認できた。
「斬りたくなんてないよ・・斬りたくなんて、ないに決ってるじゃない!!」
その叫びと共にサーベルがオクト・エイプを真っ二つに切り裂かれていく姿を
彼は見た、好きで斬っているんじゃない・・けど斬ってしまう、その姿は雅に
白い悪魔であった。
「・・御免・・なさい・・けれど、いかなきゃいけないんだ・・」
頭を抑えながらフィはパイロットにメッセージを送る、今までも
何度もMSを斬って来たがこんな気分になるのは初めての事だった、華々しい
ガンダム型の初戦闘とは対照的な嫌な感じである、もしここが宇宙空間で無いなら
この頭を拘束するヘルメットを投げ捨てて直接頭に手をおきたい。
「・・・・・」
敵パイロットにこんな事を言われるのは始めてである、一体誰が敵機に対して
謝る等という行為を予測しただろうか、敵は一体・・女である事はその声から察しがついたが
それ以上は解からない。何を言ったらいいか解からない、
「馬鹿にするな、ここは戦場だぞ?他人(ひと)の心配をしている暇があったら
自分の事を心配しろ」
「うん・・解かってる・・どいて・・でなきゃ・・斬らなきゃいけない・・」
そう告げるとサーベルを逆手に持ち替えてオクト・エイプの方をまじまじと見つめる
その機械越しの視線はパイロットにも伝わっていた。何も出来ない・・奴は本気だ
自分は軍人だ・・けれど立ち向かう事も出来ない。ただ、目の前にいる白い鉄塊を
見つめる事しか出来ない、このままではやられる、突発的に感じた時があとコンマ何秒
遅ければ彼の命はなかっただろう、右方向へ操舵をきった彼が見たのは言葉通り
フルスピードで去っていくガンダムの姿があった、バランス制御の為に広げておいた左腕は
肘部分から先が消えていた、微塵の躊躇いも無く放たれたサーベルは腕を直線に斬り落とし
そのスピードのまま戦場の彼方へと向かっていた。
「定時報告をせよ、戦闘は継続してままで行うように」
「了解、現在までに敵MS17機を破壊、全て同じ型式だと思われます。」
クドゥ・ピラーニャにしても今日が実戦発である、搭乗しているのは
訓練でも愛用している、ベルティゴ、多少頭が痛むが何時もの事である、
自分が敵機を墜すればクラウド9が勝利する、その勝利という名の大儀に
向かって自分は歩んでいる、敵機には悪いとは思う、しかしここは戦場である
そんな悠長な事はしていられない。自分を落ち着けて、戦闘への気を奮い立たす
「了解。現在そちらに新型機が向かっているという情報が入った、どんな機体かは
不明だが、確認次第撃破されたし、以上。」
「了解した。」
先程からレーダーに映っている機影はそれだったか自分でもようやく理解した
正直信じられないほどのスピードで近づいてくるそれはMSではなく機体の整備不良からくる
バグか何かにも思えたのが今ので納得できた、敵が来ている。それだけの事である。
「・・・来るな」
そう感じた彼はベルティゴに装備されているビットを射出し自分の周囲に展開させた。
それぞれのビットに神経を集中する、それと同時のベルティゴの右胸部が紫色に点灯する
「見つけたっ・・当たって・・」
操縦桿を握る手は小刻みに震えている、モニターにライフルの照準が表示され。
それは徐々にベルティゴの方へ向かって行く、だが引き金を引く直前に手が大きく横にそれ
対象へと向かっていた。それを察したクドゥもビットを一斉にフィの元へ向かわせる。
「ビット・・・!!」
それは始めての経験ではなかったが厄介な相手に代わりは無かった、何の制御も無く動くそれは
避ける事は出来るが撃ち落す事は難しい、それがフィにとっては尚更である。
計12機の攻撃を回避しつつ、サーベルを抜き放ち親であるベルティゴの元へと向かう。
無論敵の攻撃は止む事無く続いている。回避するようにと心がけてはおいたがやはり命中は
避けられない、命中する度にモニターに命中個所が表示され回避するようにと継げる
「そんな事は解かってる!」
けたたましいアラームの中で自分の中の不安を打ち消すように叫ぶフィ、敵はもう目前まで
せまっている、サイコミュは接近戦に不利である。クドゥもそれに反応してビットの攻撃を
中断して接近戦に備えサーベルを抜き来るであろう、攻撃に備える。
甲高い電子音が響き渡る、お互いに自機をみつめあっているのみだ。自分が相手が次に起こすべき
であろう行動をお互いに読み合っていた。サーベルの分はGXにあったがオールレンジを攻撃が
可能である、全体的に見れば自分に分があるクドゥはそう思っていた
「どんな、新型か知らないが、消えて貰う」
ビットを再び展開しガンダムへ照準を合わせる、正面にはベルティゴそして他方向にはビットが
拡散し、逃げ場は無い。それは危険なかけであった、正常な機動を行わないでビットで攻撃する
と言う行動は自分にとってもはじめてであった、無かった訳ではない。しかしその訓練を
やろうとする度に強制中断をうけていたのである。そんな事もあって自分でも出来れば避けたほうが
良いと思っていたしかしここで敵を墜とす事は自軍にとっても何より自分にとって得る者が大きい
多少のリスクならなんとでもなる、心は決っていた
「撃ちます・・・」
敵を撃つと決めた時からまた手の震えがはじまった、撃ってはいけない。自分でも解からない
何かがあると、そう感じていた。意を決したようにブレストバルカンのトリガーを引く牽制用の
兵器とは言え至近距離での威力は中々である、ベルティゴの胸部に次々と弾丸が打ち込まれる
クドゥの方もそれに呼応してビットで掃射をかける、両者の機体に小爆発が起きる
「・・・ゲホッ、ガホッ・・」
今ではもう手の震えはなくなっている、けれど撃った時から性格には弾が着弾する度に頭に
弾が打ち込まれたような衝撃に襲われていた、痛い・・・さっきの戦闘とは全く違う
本当に撃ち込まれたような感覚である、もう機体の操縦所では無い、コントローラーから
手を離し、座席の上でうずくまる、当然敵の攻撃は必要に続いている。機体の各部が
破損していくのがモニターに手で覆った先から見え隠れしていた。頭痛は幾分か収まっては
来たが機体を操縦できる状態とは言い難かった。それでも握るしかない。震えと言うよりは
もはや痙攣と言っても良いほどの拒否反応だった、握ろうとしても握れない、そうしている間にも
機体各部が損傷し、モニターに移されているGXの画像は所々危険を示す赤へと変わっていた。
「・・・・・」
クドゥにとってもこの光景は異様であった、つい先程まで目一杯のスピードとパワーで
向かって来たこの機体も先程から全く無抵抗のまま破壊されていくこの様は一体何なんだ
無抵抗のまま中に浮くこの機体は完全に停止しているようである。爛々と輝いていた
サーベルも今となっては柄の部分が残るのみである。
これまでも一方的な闘いなら何度も経験した、それでも敵は何かしら抵抗を見せその末に
撃破されていた、今回は全く違う、戦場において無抵抗=死そんな事も解からない程この
機体のパイロットは無知なのか、それは最低でもない。ここまで来れば相手の様子が多少
なりきも気になるのが人というものである、自分の情けなさを悔いながら攻撃の手を
少し緩める。
そっと操縦桿の方へ手を伸ばしてみる、あの症状はもう治まったようだ上を仰ぎながら
一息つき深く深呼吸を行い、機体各部の状態をチェックする、殆どの個所が破損していて
このままでは動きそうに無い、無理もない、この場で動けるようになるためにはリミッターを
解除するしかない。覚悟の上での判断だった、沈黙していた各部が息を吹き返し始める
何時まで持つか解からない、けれど試すしかない。コントローラーを再び強く握り締め
サーベルを振り上げる、自分でも驚くほどのスピードであった。
「奇襲か!!!」
それが連邦軍の作戦、彼は感じた、本来なら回避も可能だったがどう言う訳か反応が遅れ
お陰で放たれたサーベルは右肩を貫通しそれと同時に機体が大きく後方へはじきとばされた