境峠断層(松本市・木祖村・伊那市)
 権兵衛峠から始まり木祖村薮原を通って北アルプス焼岳に抜ける「境峠断層」と呼ばれる断層がある。 この断層は総延長60キロに及ぶ左横ずれ断層で、この断層を境に中央アルプスの稜線や地層の分布が数 kmずれている。最近の研究によってこの断層は第四紀の地層を切っていることがいくつかの露頭やトレン チによって認められたことから「活断層」であることがわかってきた。  断層の活動状況は、1回のずれ量と活動周期、総変位量と活動回数などの変数が露頭などの調査によっ て決定されると判明する。これらについて調べようと現在、いくつかの大学の研究者が入って研究が進め られている。
 (上写真)境峠から松本市側と木曽側を望む。この真下を断層が通過しているが、ここでは断層を観察 できる露頭はない。断層付近の岩石は粉砕され、侵食され易いので谷地形をよく作る。  境峠断層の周囲には、北側に糸魚川静岡構造線、南側に阿寺断層が存在している。これらは同じ方向に ほぼ等間隔に並走し、しかもずれ方が同じである(すべて左横ずれ)。なぜこのようなことが起こるのだ ろうか。  岩石を大きな力が加わる万力(まんりき)に挟んで力を加えると破壊が起こる。破壊はでたらめに起こ るのではなく、ある程度規則性を持っている。それは、力が加わった方向に岩石が縮もうとする壊れ方を するということだ。
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断層のずれ方等から、中部地方が東西方向に強く圧縮をされていることが判る。圧縮をしているのはも ちろんプレートの動きだ。  なお、この断層は奈川(梓川の支流)・笹川(木曽川の支流)・奈良井川・小沢川(天竜川の支流)の 河床付近を通過している。これらの川は交互に日本海と太平洋に注ぐ川となっており、つまり分水嶺に位 置するのが境峠断層なのであって、何か大きな構造単元の境をなしているのだろう。  <参考文献>   日本の地質『中部地方T』編集委員会(1988)日本の地質4 中部地方T.   狩野ほか,2002,飛騨山地南部境峠断層後期更新世完新世における活動.地質雑,108,291-305.                                (宮坂 晃)
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