(上写真)境峠から松本市側と木曽側を望む。この真下を断層が通過しているが、ここでは断層を観察
できる露頭はない。断層付近の岩石は粉砕され、侵食され易いので谷地形をよく作る。
境峠断層の周囲には、北側に糸魚川静岡構造線、南側に阿寺断層が存在している。これらは同じ方向に
ほぼ等間隔に並走し、しかもずれ方が同じである(すべて左横ずれ)。なぜこのようなことが起こるのだ
ろうか。
岩石を大きな力が加わる万力(まんりき)に挟んで力を加えると破壊が起こる。破壊はでたらめに起こ
るのではなく、ある程度規則性を持っている。それは、力が加わった方向に岩石が縮もうとする壊れ方を
するということだ。
断層のずれ方等から、中部地方が東西方向に強く圧縮をされていることが判る。圧縮をしているのはも
ちろんプレートの動きだ。
なお、この断層は奈川(梓川の支流)・笹川(木曽川の支流)・奈良井川・小沢川(天竜川の支流)の
河床付近を通過している。これらの川は交互に日本海と太平洋に注ぐ川となっており、つまり分水嶺に位
置するのが境峠断層なのであって、何か大きな構造単元の境をなしているのだろう。
<参考文献>
日本の地質『中部地方T』編集委員会(1988)日本の地質4 中部地方T.
狩野ほか,2002,飛騨山地南部境峠断層後期更新世完新世における活動.地質雑,108,291-305.
(宮坂 晃)