2001年2月11日(日)晴れAM11時 成田空港着
富士国際旅行社の添乗員の窪田さんが待っていてくれた。参加者は9人である。 1人はスウェーデンから参加する。簡単な説明を受けて、入国手続きをして待合室のロビーで待つ。
時間がきたのでとにかく飛行機に乗り込む。出発は午後12時50分だ。飛行機は午後1時4分フライトする。デンマークのコペンハーゲンまで、11時間40分の所要時間である。いよいよ8日間のデンマーク・スウェーデンへの視察の出発だ。高齢者福祉の先進国を自分の目で見てこよう。心が高鳴る。
昨日、養父は下着を濡らし朝風呂にはいる。ゆでダコなってしまっても出れないので、やむなく風呂の栓を抜いたが、寒くなってきても出れない状態が続く。夕方になると、いつものように「家に帰る」といい続けて靴下もはかない外に出て行き、養母は追いかけるに精一杯。施設が休みの土曜日と日曜日におこるいつもの状態である。
そんな中での私の長期の海外視察であり、妻や病身の養母には、大変申し訳ない思いで一杯の出発となった。
痴呆性の高齢者を抱えた家族の苦しみや悩みは、他人にはどう話してもわかってもらえないことが多くある。しかし、その現実から逃げるわけには行かないのであります。妻と2人でこの難局をどう乗り切るか、話し合う機会が多くなりました。戦前・戦中・戦後と本当に苦労してきた年寄りであります。そんな年寄りを介護していくことは、私たちの責務であり社会的に果たしていかなければならない使命でもあります。
その為にも、この視察を有意義なものにして、送り出してくれた多くの皆さんや、募金を頂いたり、留守を守ってくれる家族や現在介護でご苦労頂いている多くの市民の皆さんのお役に立たなければと決意した。・・・高い空の上で。
11時間に及ぶ機内では、スウェーデンの福祉の事前学習のために持参した本を読んだ。
PM4時24分 コペンハーゲン・カストラップ空港に着く。
外は雨である。出迎えてくれた、通訳(ガイド)の宮下孝美さん(男性)の案内でバスに乗りPM5時40分に3日間宿泊する。マーメイドホテルに到着した。PM7時 疲れていたが、小雨が降り続くなかを6人で外に出た。市庁舎や教会などおもむきのある建物と、オーバーの襟を立ててぼうしをかぶり手をポケットに入れて歩く人々を見るにつけ、北欧の国にきたのだと実感として感じた。バーに入り、ビールを注文して飲んだ。一杯の快いのどごしは、旅の疲れを癒してくれそうである。明日からいよいよ、高齢者福祉の状況をつぶさに体験できると思うと胸の高鳴りを覚える。念願かなっての視察のせいか・・・
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2月日(月) 小雨AM5時30分 起床
ホテルは古いが暖房が程よくきいており、半そででもいられ部屋である。
6時30分に朝食を食べ、7時に出発である。昨日の飛行機の疲れや時差ぼけもなんのその。
外は暗く小雨が降り続くなか、中央駅に向かう。今日は、列車とバスを利用して、二つの施設を訪問する予定である。7時23分に列車に飛び乗る。午前は、ロスキレ市のロスキレ県立介助器具展示場の視察である。2時間の時間が要るので、通訳の宮下孝美さん(デンマークに30年間在住して日本人ガイドとして生活している。)のレクチャーを受けていく。
今日は1日中バスと電車にどんなに乗ってもいい乗車券(75クローネ・・日本円で約1200円)を買っての行動である。
アムツ(県)は14県あり、医療、福祉、障害者を担当している。専門医やホームドクター医もいる。県予算の50は医療に使う。コムーネ(地方自治体)は275自治体ある。コペンハーゲン外一市は政令都市で県の仕事もやっている。コペンハーゲンは人口49万人で、14の区域に分かれている。県税は11%で市税は20%である。県立介助器具展示場は、コムーネの要請により展示場でアドバイスを行うところである。 それぞれの市は、2から10ぐらいの地域に分かれており、リーダー(看護婦など)がおり、介護スタッフが10人ぐらいいる。利用者の身近なところでお世話をするようになっている。市の予算は、地域に配分されリーダーが管理する。(リーダーは監理する能力も兼ね備えている) デンマークでは、1950年代は施設ケアだったが、在宅ケアに移ってきている。市はデイセンター(活動センター)に予算を出して、リーダーを中心に病院で亡くなる事のないようにしており、特養センターは回復の出来ない人がいるところである。
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AM8時30分ロスキレ県立介助器具展示場に着く。
レーネ ファルスターさん(作業療法士)が出迎えてくれた。やる気のある、50歳代の女性の責任者であり、2時間にわたり高齢者福祉を中心にレクチャーを受ける。(通訳は宮下孝美さん) 人口221,000人の2番目に小さい県である。
デンマークは税負担の福祉国家であり、納税者が負担している。教育も、福祉も自己負担がなく受けれる。コムーネ(自治体)は、すべての住民に責任を負う。人口は5000人から20万人で、障害者福祉はコムーネ(自治体)がやるのは大変であるので、アムツ(県)が責任を持っている。
アムツはコムーネに対してコンサルタントをするところである。病院はコムーネからアムツに移る。県の予算の50%は医療に使う。以前は病院で訓練していたが、市へ移る。病院が訓練のプログラムを作成し、市が訓練を行っていく。 訓練が大切であり、それを介助するのが器具である。能力を失った機能を介助し、以前の持っていた能力に近づけていくようにする。1960年から70年代は家族が中心だった。しかし、現在は、女性の15歳から64歳の75%が働いている。家族で看るには大変なので社会の変革が必要となり、患者に一番近い人が担当することが必要となり、自治体の中のリーダー、地域の担当者が自宅にきて相談するようになる。機能訓練は市の作業療法士などが来て行う。 在宅ケアのスタッフは、市から予算をもらっているので、そのなかで判断していく。予算を決めるのは、議会であり議員である。議員はスタッフを信頼している。自治体で、予算の内容は違う。保育も福祉もある。国が福祉に責任を負っているので、最低は決まっているが、後は自治体がどこに力入れるかによって違う。
自治体の税は16%から24%ぐらい。自治体のサービスの内容によって調整できる。20年ほど前から高齢者福祉が変化してきている。以前は、2時間のなかで、共同して本人に合ったように考え、社会性もある世話をしてきた。新しい方向は、一つのことだけをやれば終わりにしている。一つ一つのものには予算は出すが、予算を出し渋る管理福祉になっている。・・・間違った高齢者福祉である。いわゆる、専門的サービスになっている。本人が、どこまで何が出来る大切であり、市の予算が厳しいからと、節約していけばいつかそのツケが回ってくる。長期的なことを考えてやっていく高齢者福祉でなければならない。・・・
きちんとした考えをもって行政の一員として仕事をしている姿に感動
誰でも、人間としての権利を持っているということでやることが大切である。本人が、どういう環境と家族の中で暮らしているかが大切で、自ら活動に参加することが大切。 女性は働いており、自宅にはいない。出来るだけ自宅で自分で生活できるように援助する。その為に、人間的サービスや補助金も出す。補助器具は安く、質がよく、一人一人にあったもので、再利用、再使用されて行く。障害児の保護器具は回転率が早い。成長が早いので、最初に市にあるものを貸し出し、なければ県のセンターのものを借りていく。個人個人で必要なものは、県が市にアドバイスして、貸し出しすべて無料である。65歳以上を高齢者とするのは、間違っている。年金が、65歳以上から支給されるので、あくまで統計を執るためのものである。65歳以上は15%である。デンマークには定年はない。平均寿命は、女が78歳、男が72歳である。介助器具も利用者負担はなく、利用者が申請を市にすれば、県を通して製造元へ頼む。
ロスキレ県立介助器具展示場は、リーダー(アシスタントができる)作業療法士のほかに、合計5人で行っている。週1回午後は、誰でもここに来て展示してある器具を見ることが出来る。テーマを決めて相談会も行っている。製品の紹介も業者が行う。ホームヘルパーや作業療法士、パーキンソン病の家族などの研修センターとしても利用している。
利用者が、市の担当者と一緒にくると、インフォメーションをする。労働は、週37時間労働である。午前8時から午後3時までオープンし、9時から午後2時まで電話相談(金は休み)。介助器具は、2週間ぐらい家で使用してみて、自分にあっているか試す。知的障害者の場合は、2週間から3週間以上もかかる。そして、きちんとできるか点検する。また、外でも出来るか実際に専門家が見て判断する。 施設の中は色々な介助器具がたくさん展示してある。一つ一つ丁寧に説明していただき、時間がなくなってしまった。・・・もっともっと時間がほしい(時間は2時間しかない)高齢者や障害者の立場にたった、こんなにもたくさんの介助器具があることに驚いた。日本にも、施設に展示場はあるが、一般的な物ばかりである。ここは、スジ金入りの介助器具ばかりである。高齢者や障害者が、社会の中で自立して生活していくために専門的な県立の施設があるのである。自分の家で、長く生活できるかが基本であり、その為に住宅の改造や、介助器具を提供している。障害の度合いに関係なく、本人の意思を尊重して、色々な援助をすることが必要であるという。すばらしいことである
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